中国への実用新案出願では「保護客体」に留意

中国の実用新案は無審査制度で知られている。権利化費用が特許より低額で、権利化までの期間が短く、要求される進歩性のハードルが特許より低く無効審判で無効にしにくい、などのメリットが考えられる。日本企業も積極的に出願して権利を活用できる場面も多い。しかしながら、中国の実案は無審査主義と言われながらも、近年の査定率は6割強に過ぎないところにもご留意いただきたい。安易に出願したところで権利化できなかったりした場合、中国語明細書の翻訳費用、出願費用などが無駄になってしまう。日本出願人が中国への実用新案出願を検討する際、特に留意すべきは本当に「保護客体」に属するか否かである。ここ数年では、保護客体ではないとして、拒絶されている案件が多発しているからである。

中国特許法は、2条3項において保護客体について以下のように規定している。「実用新案とは、製品の形状、構造またはその組み合わせに対する実用に適した新しい技術方案である。」

以下の幾つかの面から審査されることが審査指南によって明らかにされている。中国へ実案出願する際は、クレームを照らし合わせながら、下記についてご検討ください。

A、実用新案が保護するのは製品のみである。

・製品とは産業的な方法によって製造された、確定された形状、構造有し且つ一定の空間を占有する実体である。

・あらゆる方法、及び人工的に製造されたものではない、自然的に存在する物品は実用新案の客体ではない。

・あらゆる方法とは、製品の製造方法、使用方法、通信方法、処理方法、コンピュータプログラム、及び製品を特定の用途に用いるなどである。

・発明/考案が製品の形状、構造に対する改良、及び該製品を生産する専用の方法、工程または該製品の材料自身などの改良を含む場合、実案は製品の形状、構造の改良に関する技術方案のみ保護する。

・請求項は既知の方法の名称によって限定した製品の形状、構造を含むことができるが、方法のステップ、工程条件などを含むことができない(例えば、溶接、リベット締め等の既知の方法の名称で各部材の接続関係を限定するものは、方法に対する改良とはみなされない)。

・請求項に形状、構造的特徴も、方法に対する改良も含まれる場合、仮に製品の製造方法、使用方法、コンピュータプログラムに対して限定する技術的特徴が含まれる場合は、実用新案の保護客体ではない。

B、製品の形状及び/または構造

・製品の形状とは製品が有する、外部から観察できる確定した空間形状である。

・製品の形状に対する改善は、製品の三次元形態に対する改善でもよい。製品の二次元形態に対する改善でもよい。

・確定した形態のない製品、例えば気体、液体、粉末状、顆粒状の物質または材料、その形状は実案製品の形状的特徴とすることができない。

・生物的な、または自然に形成された正常を製品の形状特徴とすることはでない。

・配置、積み重ねなどの方法で得られた確定的でない形状を製品の形状特徴とすることはできない。

・製品中のある技術的特徴が確定した形状を有しない物質(例えば気体、液体、粉末状、顆粒状の物質)でもよいが、該製品において該製品の構造的特徴により制限されていればよい。 (例えば、温度計中の確定した形状のないエタノールは許される)

・製品の形状とは、特定の状況下において有する確定した空間形状でもよい。

C、製品の構造

・製品の構造とは、製品の各構成部分の配置、組み合わせ及び相互関係である。

・製品の構造は、機械的構造でも、回路的構造でもよい。

・機械的構造とは製品の部品の相対的位置関係、接続関係及び必要とする機械的配合構造である。

・回路的構造とは、製品の部材間の確定した連結関係である。

・複合層は製品の構造に属し、製品の浸炭層、酸化層などは複合層構造である。

物質の分子構造、成分、金相構造は実案の保護する製品構造ではない

・請求項中には既知の材料の名称を含めることができる(例えば木材フローリング、プラスチックコップ)

・請求項中に形状、構造的特徴が含まれ、さらに材料自身に対する改良が含まれる場合は、実案の保護客体ではない。

D,技術方案

・技術的手段を用いて技術課題を解決し、自然法則に合致した技術効果が得られていない方案は、保護客体ではない。

・製品の形状及び表面のパターン、色彩またはその組み合わせの新方案で、技術的課題を解決していないものは、保護客体ではない。

・製品表面の文字、記号、図表またはその組み合わせの新法案は、保護客体ではない。

 

より詳細な説明、及び実例は、中国専利審査指南第一部分第二章6~6.3を参照されたい。

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