中国知財実務は、日々刻刻動いている。

中国の特許出願数が年間百万件以上を達成してから久しい(2017年特許出願件数138万件)。一方で無審査主義のもと、年間百万件の実用新案権や数十万件の意匠権も継続的に生まれている。商標実務においては、2017年に庁費用が半減したこともあり、年間550万件の出願件数を記録した。これは開庁日ザックリ250日と計算すれば、出願が一日遅れるだけで2万2千件の先願が増えることになる。

一方で知財紛争に目を向ければ、年間20万件の知財訴訟が中国の地で提起されている。知財訴訟年間が数百件の日本とは幾つも桁が違っていることにお気づきであろう。水面下で行われている探り合いや交渉、和解も含まれば、その実態はなお一層多いのも推測される。

「中国で権利を持っていても仕方ない」「中国で裁判をしても勝てない」そんな時代は明らかに過去のものとなった。権利者が泣き寝入りするところか、むしろ企業や国民の権利意識が覚醒し、皆が権利獲得や、権利主張に奮走している時代である。司法システムも大いに進化を遂げ、北京、上海、広州の三地で知財裁判所が設立されて以来、知財訴訟の審理の専門化が急速に発展し、その審理の「精度」も大いに改善されたと言えよう。

そしてさらに大きな進化を遂げているのが行政や司法の「情報開示」やデータベースの整備である。一昔前は限られた数の判例や審決しか入手できず、ほぼ手めぐりで限られた情報しか抽出できなかった判例解析も、今や多くの新鮮な判例や審決が日々入手でき、システマティックに調査や解析ができるようになりつつある。産業の発展が目覚しく、技術は日々大きく進化している。その最前線で起きているありとあらゆる紛争に対して、時折判断が困難ケースも多く含まれるのは想像に難くないが、裁判所は何としてもその場面における最善な判断を速やかに出さなければいけないことになる。そして幸いにもこの時代、我々はその「判決」から、その最新の裁判所の考え方や基準を知ることができる。そして行政庁も同じである。その「審決」から、専利復審委員会や商標評議委員会の最新の考え方や基準を知ることができる。

これらから、そのエッセンスを抽出して、ある種の指針として日々の中国における権利化&権利活用実務にフィードバックすることで、知財戦略の再構築、真に強い権利、活用に耐えられる権利の形成、正確且つ適切な権利化業務の遂行、訴訟リスクの回避や紛争解決に役立て、日々の実務においてそれらの業務を最適化することを実践している。